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●淳と琴音の神隠し 第一章 神隠し

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淳と琴音の神隠し


 [物語] ハクの妹 [イラスト] みる [MIDI] RECIPRO


  

第一章 神隠し 第六章 狐の少女 第11章 森の声
  第二章 「油屋」の人々 第七章 「沼の底」駅 第12章 自然と人間・愛と憎しみ
  第三章 珊瑚 第八章 茜と珊瑚 最終章  未来へ
  第四章 変わりゆく気持ち 第九章 茜とハクの神隠し  
  第五章 お代の無いお客様 第十章 出発!  

【淳と琴音の神隠し】

【Eternal Loop 〜生命の環〜】

【妖霊鎮魂唄】

【番外・別話】 【詩曲】 【解説】

   

第一章  神隠し

 
 
ある日、望月茜(もちづき あかね)がいなくなった。茜は少し内気な中学二年生。
彼女のクラスメイトで、太川淳(たがわ あつし)と、山内琴音(やまうち ことね)がいた。
二人はクラスでも公認のカップルで、学校でも仲良くしている姿が度々目撃されている。
そんな二人を羨ましそうに見ている者がいた。

茜だ。茜は、淳のことが好きになってしまったのだ。そして、夏の始め、
ダメだとわかっていて彼女は淳に想いを言った。案の定、答えはNOだった。

それだけならまだいいのだが、
そのことが琴音の耳に入ってしまったのである。それからというもの、茜と琴音の仲は険悪になり、茜は自分がした行動を、心から後悔した。

その矢先、茜が姿を消した。
両親は死に物狂いで彼女を捜し、
クラスメイトも協力せざるをえなくなった。
中でも淳と琴音は特に乗り気ではない。

「ったく、茜ちゃん、どこに行っちゃったのよ!?こっちの迷惑も考えてほしいわ。ねえ?」
琴音は淳に同意を求める。
しかし、淳は思ったよりも心配そうな表情をしていた。

「・・・どうしたのよ?」
「だってさ、あの時はすげえムカツイタけど、あいつ、あの後すごくヘコんでたじゃん。何か、罪悪感、感じてさ・・・」
琴音も確かに言い過ぎたなと思った。
そう思うと、茜のことがすごく心配になってきた。

「・・・しょうがないなあ。正直、やっぱり心配!真面目に捜そう!」
「あっちの方も見にいってみようぜ」
そこは奥に森が続いていて、周りには誰もいなかった。
それもそのはず、辺りには背の高い草が生え、どことなく薄気味悪い、
人を寄せ付けない感じがしたのだ。勝気な琴音もさすがに気味が悪くなった。

「ねえ、よそうよ。ここ、マジでやばいよ・・・」
淳のそでをひっぱるが、淳は構わずどんどん進んでいく。
「ちょっと!引き返そうよ!ミイラ取りがミイラになったらどうすんのよ!?」
「心配なんだよ」

「え?」
「今まで俺、あいつの悪い所ばかり見てたような気がするんだ。
もっと、あいつのいい所とか、事情とか、ちゃんと見てやれなかったような気がするんだ」
淳の表情は真剣だった。琴音は今までのことを振り返った。
そういえば、茜の悪い所ばかり見ていて、
いい所は見ようともしていなかったのではないか――
そんなことを考えていると、急に淳が叫んだ。


「おーい!向こうにトンネルがあるぞ!」
急いで駆け寄る琴音。すると、目の前に、
まるで異空間への抜け道のような、大きなトンネルがぽっかりと口を開けていた。
近づくと、風がトンネルの中に吸い込まれていた。中に何があるのだろうか?
「・・・行く?」
「ああ」

自分達がここに来たことを証明するために、
琴音は髪にとめていたヘアピンを置いていった。淳はリストバンドを近くの枝に結びつけた。
そして、二人は中へと入っていった。この先二人に待ち受ける事態など知る由もなく・・・。
トンネルの中は真っ暗だった。明かり一つ置いていない。気のせいか、ジメジメしているようだった。
トンネルを抜けると、目の前には草原が広がっていた。心地いい風が吹いている。

「・・・ここは・・・」
「まさか、本当に違う世界に来ちまったとか・・・」
二人はしばらく呆然としていたが、我に返ると、ゴクリと唾をのんで、歩みを進めていった。
歩いていく途中に、底に石が溜まっている窪みがあった。
「ここ、川だったのかなあ?」
そこを飛び越え、また歩いていくと、何やら町が見えた。
「・・・あんな所に町なんてあったか?」
「分かんない・・・」

不思議な所だった。建物の一つ一つが見たこともないデザインをしていた。
特に「めめ」とか「唇」とかの看板には目を引かれた。
「ねえ、あそこ・・・」
「ん?」
「『めめ』って書いてあるとこ、『生あります』って、まさか、生の・・・」
「やめろよ。気持ちわりい」
不意に、琴音が座り込んでしまった。
「どうした?」
「淳・・・、足痛い」
「大丈夫か?」
淳はとりあえず琴音を建物の隅に座らせて、自分だけ様子を見てくることにした。

「気をつけて」
「すぐに戻ってくるから」
琴音を残し、町の中心に向かう。階段の前まで来ると、淳は思わずため息をもらした。
そこには「油屋」と書かれた旗があり、その向こうにとても大きな建物が見えた。
豪華絢爛で、一昔前の日本を思わせる。

その建物を見ながら歩いていると、橋があることに気付いた。
その上に、紅い豪華な着物を着て、髪には綺麗な髪飾りをつけた少女がたっていた。
その少女は川の流れを見つめている。
淳が見つめていると、少女がこちらに気付いた。
その途端、顔を険しくして淳に向かってきた。

「!あなたはここに来てはいけません!」
「え?」


「もうすぐ夜になります!夜になればここから出られなくなってしまう!
私が時間を稼ぐから、元来た所へ向かって走りなさい!」

そう言うと、少女はふうっと息を吐き、口からキラキラしたものが出てきた。
淳は分けがわからなかったが、とにかく走り出した。
今まで明るかったのに、もう暗くなり始めている。
琴音の元へ行くころには、すっかり暗くなっていた。

(!)
琴音がいない!?辺りを捜すが見つからない。
「琴音ー!琴音ー!!」
しかし返事が返ってこない。
しかも、周りにはいつの間にか明かりがついており、
化け物のような黒い影がひしめきあっている。
「・・・ちくしょう!!」
とにかく自分だけでも戻って、みんなに知らせよう!そう思った淳だったが、
町の外れまで戻ると、草原だったはずの所が海になっている!

「・・・何だよこれ!?」
見ると、一艘の大きな船がこちらに向かっている。
やがてその船が着くと、中から見たこともない生き物が出てきた!
「夢だ!夢だ!みんな消えろ!」
そう言いながら建物の陰に行く。すると、何と自分の体が消え始めている!
「・・・って俺が消えてるじゃん!」
その時、町の中からさっきの少女が出てきた。
そして淳の元へ行くと、小さな丸い実を差し出した。
「これを食べて。この世界のものを食べないと、あなたは消えてしまう!」
しかし、完全にパニックを起こしている淳は、少女の手を振り解こうとした。

「来るな!」
突き飛ばそうとして、手に手ごたえが無かった。
見ると、淳の手が少女の体をすり抜けていたのだ!
(!!)
少女はもう一度実を差し出す。
「早く食べて」
淳は素直に従った。何とか飲み込むと、少女が話しかけてきた。
「もう大丈夫よ。ほら、私の手を触って。触れるわ」
淳が恐る恐る触れると、ちゃんと触ることができた。
「ね!」少女はにっこりと笑った。そこで淳はあることに気付いた。

「!!!茜ちゃん!?」
そう、この少女は、いなくなった望月茜だったのだ!
「・・・やっぱり淳君ね。みんな心配したでしょ?」
「心配したもなにも、大変なことになってるんだぞ!」
「ごめんなさい。事情は後で説明するわ。とにかく今は私についてきて」
「琴音は、琴音は!?」
茜は沈痛な表情をした。


「・・・琴音ちゃんは手遅れだったわね・・・。でも安心して。きっと無事よ。
淳くんが見た大きな建物、『油屋』ってあったでしょ?」
「ああ」
「あそこにいるわ。そして私も。淳君にもしばらくそこにいてもらうことになると思う」
その言葉を聞いて、淳は落胆した。
「・・・もう、戻れねえのか・・・?」
「そんなことない!きっと戻れるわ!あきらめないで。チャンスをうかがうのよ。
・・・ごめんね、こんなことに巻き込んじゃって・・・」
淳はもう、覚悟を決めたようだ。
「・・・分かった。もう何も言わねーよ。でも、なるべく早く戻れるようにしてくれよな」
「うん。・・・ところで、淳君は五十メートル何秒?」

「え?」 淳は言っている意味が分からなかった。
しかし、今はとにかくここのことを一番知っている茜に従うしかない。
「・・・八秒くらい」
「ちょっと遅いわね」
そう言うと、淳の足に手をかざした。
「・・・炎と大地の名において、この者の力を目覚めさせよ・・・!」
すると、淳の足が光り始めた。
「さあ!走って!」
茜は淳の手を取ると、物凄いスピードで走り始めた。

「うわあ!」
周りの景色がどんどん後ろに去っていく。こんなスピード、とてもついていけないと思った。
しかし、なぜか足は面白いように加速する。でも、たしか茜は足が遅かったのでは・・・?
さっきの階段が見えてきた。茜が叫ぶ。
「階段は飛び越えられるわ!橋の前まで来たら止まって!」
二人は階段をポーンと一気に飛び越え、橋の袂で止まった。

「ここからは息を止めて。もし少しでも呼吸をしたら、あなたが人間だと分かってしまうから」
橋の上は、さっき見た化け物が行き交いしていた。
その化け物が入っていくこの「油屋」は一体どんな建物なのだろうか?
淳は深く息を吸うと、鼻を摘んだ。
「見回りから戻りました」
「ご苦労さまです」
二人は橋を渡っていく。途中までは順調だった。
しかし、ユニークな姿の生き物を見て、淳は思わず吹き出してしまった。
(しまった!!) 慌てて口を抑えたが遅かった。


「!人間だ!人間がいるぞ!!」 その瞬間、茜が走った。
いや、走ったというより飛んだと言った方が正しいかもしれない。
淳の存在を知ってしまった者に素早く近づいて手をかざす。するとその手が光った。
「・・・忘れなさい」
そして淳の手を掴むと、裏口へ入った。
何が起こったのか分からず、呆然としていた淳。
我に返ると茂みに隠れていて、茜が様子をうかがっていた。

「・・・今の・・・」
「ああ、これ?何か知らない間に使えるようになったの。すごいでしょ」
茜は手から炎を出してみたりした。
「・・・今から私の言う通りにして。まず、この騒ぎが収まったら
ここを回って・・・って、淳君はここの地図を知らないわね」
茜が淳の額に手をあてる。すると、淳の頭の中に色鮮やかな光景が浮かんできた。

「ここを回って、裏の階段に出たら、そこをずっと降りていって。
ドアがあるはずだから、そこから中へ入るの。中にいる人に『ここで働かせてください』
って頼むのよ。断られても粘り強くね」
淳は少し不機嫌そうだ。

「なーんで俺が他人にペコペコ頭下げなきゃなんねーんだよ」
「お願い、我慢して。この世界では、働かない者はみんな動物にされてしまうの」
動物・・・。ゾッとした淳は、「分かった、分かった」と首を縦に振った。

建物の中では、まだ騒ぎが収まっておらず、
「珊瑚様が人間を連れ込んだらしいぞ」、
「珊瑚様ー!どこにいらっしゃるのですかー!?」などと声がしている。
茜は立ち上がり、「騒がしいですよ!珊瑚はここにいます!」と言った後、淳の方を向いた。
「がんばってね。必ずあなた達を元の世界に戻してあげるから。
あと、私のここでの名前は『珊瑚』よ。気をつけてね」

「分かった」
そして茜は建物の中へと消えていった。
淳は裏の階段に目をやった。まだ分からないことは山ほどある。
琴音の居場所も分からない。しかし、今は自分の身を守る事が第一である。
必ず琴音を助け出さなければ。
そして、茜も・・・。
どういう事情があったのかは知らないが、何となく淋しそうな瞳をしていた。
淳は意を決して立ち上がった。

                            つづく

 
 

 


 
【考察】

 

 


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